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SPECIAL

気鋭のオタク現代アーティスト・池内啓人さんが創りだす、「もう一つの未来」 Vol.6

池内啓人

造形作家

1990年東京都生まれ。造形作家。多摩美術大学情報デザイン学科卒。卒業制作としてパソコンとプラモデルを組み合わせたジオラマ作品を作ったことがきっかけとなり、文化庁主催の「メディア芸術祭」や世界最高峰のメディアイベント「アルス・エレクトロニカ」に招待され、国内外で高い評価を受けているジオラマ造形作家。

摸型とデジタルガジェットを掛け合わせ、未来的な異世界を創りだすクリエイターがいる。造形作家の池内啓人さんが創りだす作品は、レトロフューチャーを思わせるものやアニメを具現化したものなど、「SF魂」がときめくものばかり。しかも「普段使い」ができるモノとしても機能している。モノがどんどんシンプルになっていく時代に、あえてメカっぽさを強調し、実現しなかった「もう一つの未来」へと逆行しているかのよう。異端なクリエイターの、創作への思いを全6回にわたってお届けします。

無いなら自分で創ればいい

あまり前例のない模型を使った造形作家という道なき道を歩んでいるような生き方ですが、それについてはどう考えてますか?

前例がないので、お金の面で他の人を参考にできないのが難しいところです。たとえば大理石の彫刻のような一点ものの作品でしたら、純粋芸術は値段が高いという文脈があって、何千万円という値段で売れたりすることもありますけど、僕の場合は一点ものといっても、もともとは市販の模型ですので値段の付け方が自分でもわからない。あるいは普段使いができることを目指しているので、普通に商品としての値段にすべきなのか......。これが油絵の作品ならわかりやすいんですけど、僕が作っているものはそうした美術の文脈に乗せづらいんですよね。

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油絵は絵具を買ってきて絵を描くわけですけど、池内さんの場合は模型が絵具みたいなものですよね。

僕もそう思ってるんです。ある人からは「生け花みたいだね」と言われたこともあります。いろんな模型を持ってきて好きな形を作りあげていく。

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とはいえ、他の人と同じことをやりたくないという気持ちもあるのでは?

それはありますね。同じことをやっている人がいると負けるのも嫌ですし。もともとデジタル研究部の頃に、ずっと虐げられているような感覚があって、他の部員に負けたくないという反骨心が芽生えたのが最初のきっかけでしたからね。その後は美術大学の純粋芸術至上主義みたいな風潮に反骨心が出てきて、「オレは模型で卒業してやる!」と思って創作をはじめたわけで、今はモノがどんどんシンプルになっていく時代に対して反骨心があります。

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自分が望まない世界に対する反骨心が原点?

非常にそれはあります。自分が望む世界がないというのが非常に悔しい。オタクをやってますと、中学高校になるとアニメのような学園生活があるものだろうと期待するわけですが、実際はまるで女子との会話がない生活だったんです。そういうものだと受け止めようとしていたんですけど、友だちに恋人がいたりして、なんか思ってたのと違うぞ!?って悔しさを感じましたね。これまでは無いものが手に入らないままの生活を送ってたんですけど、今は無いなら自分で作ればいいんだっていう感覚があります。

モノづくりを通して人と共感する

自分が好きなことを形にして楽しんでいるように見えますけど、それは自然と楽しめていることなのか、それとも作ることを楽しんだほうが人生楽しくなるはず、と考えてのことなんでしょうか。

どちらかという後者です。オタク特有の劣等感がずっとあったので、普通の女性と話すのが難しいからアニメに出てくる主従関係で縛られたメイドに惹かれるようになって、そうした劣等感を埋めるためにモノづくりをしていた節が大いにあります。デジタル研究部の頃も周りのみんなが自分よりもスゴイと感じて見返してやりたいという気持ちがあったと思います。マイナスをプラスにするというより、マイナスをゼロにするような感じでしたね。

かなり客観的に自己分析されてますね。

やはり美術大学だったので、腹が立つ人がいたときに、言い負かしたり殴ったりしてわからせるのではなくて、相手よりいいモノを作って、どうだ!というのが復讐としては正しいと考える、と申しますか。そんな感じで最初の頃は、復讐心と劣等感を埋め合わせるために作っていた部分もあるんですが、アトリエを開いて作品を通して人と交流するようになってからは、人と共感できることが楽しいです。フィリップ・K・ディックが著書『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』で人間の定義として「共感」をテーマにしているんですが、今になって「やっぱりそうだったんだ」と実感してます(笑)。いろんな人との交流を通して共感を分かち合うことで、はじめて人生の目的が達成されると申しますか、モノを作ることが僕にとってはコミュニケーションの一環になっていて、今は楽しんで作るようにしてますね。

『ブレードランナー』を見てないと言いながら、原作者のフィリップ・K・ディックの話になりましたね(笑)。話がまとまったところで、お開きとさせていただきます。

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池内さんありがとうございました。

おわり