気鋭のオタク現代アーティスト・池内啓人さんが創りだす、「もう一つの未来」 Vol.1

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気鋭のオタク現代アーティスト・池内啓人さんが創りだす、「もう一つの未来」 Vol.1

摸型とデジタルガジェットを掛け合わせ、未来的な異世界を創りだすクリエイターがいる。造形作家の池内啓人さんが創りだす作品は、レトロフューチャーを思わせるものやアニメを具現化したものなど、「SF魂」がときめくものばかり。しかも「普段使い」ができるモノとしても機能している。モノがどんどんシンプルになっていく時代に、あえてメカっぽさを強調し、実現しなかった「もう一つの未来」へと逆行しているかのよう。異端なクリエイターの、創作への思いを全6回にわたってお届けします。

【Vol.1】【Vol.2】 【Vol.3】 【Vol.4】 【Vol.5】 【Vol.6】

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池内啓人(いけうち・ひろと)

1990年東京都生まれ。造形作家。多摩美術大学情報デザイン学科卒。卒業制作としてパソコンとプラモデルを組み合わせたジオラマ作品を作ったことがきっかけとなり、文化庁主催の「メディア芸術祭」や世界最高峰のメディアイベント「アルス・エレクトロニカ」に招待され、国内外で高い評価を受けているジオラマ造形作家。

【Vol.1】 オタク道を追求するサークルで、自分の存在意義を見つけるには、一芸に秀でている必要があった。それが僕にとって「模型」でした。

すべてはガンプラから始まった

パソコン周辺機器や家電製品などを使ってジオラマ化するというコンセプトがとにかく斬新です。この発想で作品を作ることになったきっかけは?

多摩美術大学の2年生のときにマウスを戦車風に作ったのが一番最初です。学部は情報デザイン学科で、主にホームページやフラッシュコンテンツを勉強していたんですけど......「デジタル研究部」というサークルに所属していて、その発表会に合わせて作ったのが最初でした。

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もともとプラモデルが趣味だったんですか?

高校卒業から大学入学までの2カ月間、特にやることもなくヒマを持て余していたときに友だちから模型を勧められたんですよね。それまでは特にプラモデルが好きというわけでもなかったんですけど、子どもの頃に『ゾイド』や『デジモンアドベンチャー』といったメカニックなものが出てくるアニメが好きだったこともあって、すぐにハマってしまったんです。

『ゾイド』というと、恐竜をメカニックな造形にしていて、池内さんの表現と通じるものがありそうですね。当時はどんなプラモを作っていたんでしょう?

模型を勧めてくれた友だちがガンダム好きだったので、僕も最初は普通にガンプラを作ってました。その頃ちょうど『ファイブスター物語』というマンガを読んでまして、作者の永野護先生が『Zガンダム』でデザインしたキュベレイやリックディアスを作ることからはじめたんです。

では本格的に模型を作りはじめたのは大学卒業後なんでしょうか。

僕が入っていたデジタル研究部がオタクの梁山泊みたいなサークルだったんです。サークル棟の一番端っこにある掃き溜めみたいな部室だったんですけど、一日中カードゲームをやっている人もいれば、写真を追求している人もいて、自分が好きなことに関してはみんなすごくレベルが高かった。このサークルで自分の存在意義を見つけるには、何か一芸に秀でていなければいけない。そこで僕は「模型を作り続けてます」ということになりまして、部室の外にエアブラシを置いて毎日模型を作るようになったんです。

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PCのマウスを兵器風に改造

当時はあくまで趣味を極めるという感じだったわけですね。

そうなんです。それまでは普通に模型を作っていて、デジタル研究部の発表会でも普通に模型を展示するつもりだったんですけど、部長から「一応はデジタル研究部という名称なので、多少はデジタル方面に寄せてほしい」と言われたんですよね。そこで「パソコン周辺機器ならいいでしょう」となったわけです。これで許してくださいって感じでした(笑)。

狙って生み出したというより、事情があって偶然生み出されたわけですか。

それもありますけど、もともと模型好きとして横山宏さん(イラストレーター・モデラー)が大好きだったんですよね。横山さんの作品に市販のロボット掃除機を戦車みたいに改造した作品がありまして、すごくいいなぁって憧れてたんです。それで自分独自の模型を作ってみようと思ったとき、横山さんの影響もあってマウスを兵器っぽく改造してみようとなったわけです。

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モデラーの世界では彩色によっていかに使用感を出すかといったリアリティを追求しますけど、池内さんのモデラーとしてのこだわりは?

ガンプラに関していうと、『ガンダムSEED』、『ガンダムSEED DESTINY』、『ガンダム00』が放映されていた世代なので、その反動で泥臭いものを求めるようになったかもしれないです。いずれも宇宙空間が舞台のきれいな戦闘シーンが多くて、一部のファンの間で「もっと泥臭い戦闘が見たい」っていう欲求が当時あったんですよね。そこへ横山宏さんの影響が加わったように思いますね。その他にジオラマ作家の荒川直人さんの影響を強く受けてます。「円形劇場」という360度どこから見てもいいジオラマを作っている方なんですけど、それがとにかくすごくて、憧れていた節がありますね。

【Vol.1】では、池内さんが模型作りを始めた経緯や、造形作家としてのルーツをお聞きしています。

【Vol.2】では、なかなか認められなかった学生時代から、現代アーティストとして評価されるに至ったストーリー、さらには「理想のロボット」についても語っていただきました。

【Vol.3】では、世界最先端のメディアアートの祭典「アルス・エレクトロニカ」に出展したときのことや、日本独自の模型文化について思うこと、池内さん流ジオラマの作り方など、ちょっとディープなお話をお届けします。

【Vol.4】では、「自分が思い描いていた未来像」を再現するために模型のパーツを使い始めたという、造形作家誕生の起源についてお聞きしています。

【Vol.5】では、ジオラマ制作の難しさと面白さについて、造形作家としてのこだわりに迫ります。

【Vol.6】では、かなり客観的に自己分析をする、造形作家の素顔をお伝えしています。

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